線形代数を学んでいると「部分空間の次元」や「基底」という言葉が頻繁に出てきます。特にベクトルが一次従属な場合にも基底が存在するのはなぜか、疑問に思う方も多いでしょう。この記事ではその仕組みをわかりやすく解説します。
基底と次元の基本的な定義
基底とは、その空間を生成する最小限の一次独立なベクトルの組を指します。そして、その基底を構成するベクトルの数が次元です。例えば、2次元平面では基底は2本の一次独立なベクトルで構成されます。
重要なのは「基底は必ずしも与えられた全てのベクトルを使う必要はない」という点です。一次従属のベクトル集合からも、不要なものを削れば基底が得られます。
2つのベクトルが一次従属な場合
例えば、V = R²において v1 = (1, 2)、v2 = (2, 4) というベクトルを考えます。これらは一次従属であり、v2はv1の2倍です。このとき v1とv2が張る部分空間は、実際には1本の直線にすぎません。
したがって、基底は1つのベクトル、例えば v1 だけで十分です。部分空間の次元は1となります。
なぜ基底が存在するのか
どんな場合でも、部分空間は必ず「最小限の独立なベクトルの組」で表すことができます。一次従属な集合であっても、冗長なベクトルを取り除くことで一次独立な集合にでき、その集合が基底となります。
つまり「一次従属=基底がない」ではなく、「一次従属=一部を削って基底にする」と考えるのが正しい理解です。
具体例で理解する
例えば、ベクトル (1,0,0) と (2,0,0) を考えましょう。この2つは一次従属です。しかし、これらが張る部分空間はx軸であり、基底は (1,0,0) の1つだけで十分です。次元は1です。
逆に、もし (1,0,0) と (0,1,0) ならば一次独立であり、張る部分空間は平面になります。この場合は基底が2本で、次元は2となります。
まとめ
ベクトルの集合が一次従属であっても、その集合が張る部分空間には必ず基底が存在します。不要なベクトルを取り除いた一次独立な部分集合が基底であり、その数が次元です。従って「一次従属でも基底がある」というのは矛盾ではなく、線形代数の基本的な仕組みなのです。
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