確率論と統計学における「分散」の違いとその理由

大学数学

確率論と統計学で用いられる「分散」について、なぜ同じ言葉を使いながらもその定義や計算式が異なるのかという疑問を持つ方は多いでしょう。この記事では、その違いと、なぜ「分散」という同じ言葉が使われるのかについて解説します。

確率論と統計学における「分散」の定義

確率論と統計学では、「分散」という言葉が同じように使われますが、実際の定義や計算方法は異なります。まず、確率論における分散と統計学における分散の違いを簡単に説明します。

確率論では、分散は確率変数Xの期待値からの偏差の二乗の期待値を示します。式で表すと、V[X] = E[(X – μ)^2] です。ここで、μはXの期待値です。

一方、統計学での分散は、標本データのばらつきを測るために使用されます。標本分散は、σ^2 = Σ(xi – μ)^2 / N (Nは標本のサイズ)で計算されますが、標本から母集団を推定するために、標本分散では分母をNではなく(N-1)にすることが一般的です。

「分散」という言葉の共通点

確率論と統計学で異なる定義が使われているにも関わらず、なぜ「分散」という同じ言葉が使われるのでしょうか?それは、どちらもデータのばらつき具合、すなわち「平均からどれくらい離れているか」を測定するための指標として共通しているからです。

確率論では、分散は理論的な分布(確率分布)に基づく計算であり、統計学では実際に得られた標本データに基づく計算です。いずれの場合も、「データのばらつき具合」を示すという意味では同じ目的を持っています。

確率変数と標本データの違い

質問にもあるように、確率論では「確率変数X」とは、確率空間における関数であり、ある確率分布に従う値を取る変数です。一方、統計学では「標本データx」は、実際に観測された値を指します。確率変数と標本データは異なりますが、標本データは確率論における確率変数と同じように確率分布に従うと考えることもできます。

そのため、統計学で得られる標本分散は、確率論で計算される理論的な分散の推定値とみなすことができるのです。

「分散」という言葉の混乱を解消するために

確率論と統計学で「分散」という言葉を使う理由は、どちらもデータのばらつきを測定する指標として使われるからです。しかし、計算方法が異なるため、それぞれの分野で異なる意味を持ちます。確率論では理論的な計算、統計学では実際のデータに基づく計算として使われています。

このように、両者が同じ「分散」を使っているからといって、定義が完全に同じというわけではなく、文脈によってその意味が異なることを理解することが重要です。

まとめ

確率論と統計学で使われる「分散」という言葉は、データのばらつきを示す共通の指標として使われていますが、その定義や計算方法は異なります。確率論では理論的な確率分布に基づき、統計学では標本データに基づく分散を計算します。この違いを理解し、文脈に応じて適切に使い分けることが大切です。

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