光化学反応における量子収率は、吸収された光子1 molあたりに生成される生成物のmol数を示す重要な指標です。今回は、シクロヘキサンと酸素を使った光化学反応で生成されたε‐カプロラクトンの量子収率を計算する方法を解説します。本記事では、実験条件に基づいた量子収率の求め方をステップバイステップで説明します。
量子収率とは?
量子収率(quantum yield)は、光化学反応における光の効率を表す指標で、1 molの光子を吸収したときに生成される生成物のmol数を示します。この値が大きいほど、光エネルギーを効率的に利用できていることを意味します。
一般的に、量子収率は以下の式で計算されます:
量子収率 = 生成物のmol数 / 吸収された光子のmol数
実験条件の確認
実験では、シクロヘキサン(C₆H₁₂)と酸素(O₂)が25°C、1.00 atmの条件下で光照射を受け、ε‐カプロラクトン(C₆H₁₀O₂)が主生成物として得られました。反応後、気相中の総圧は初期の2倍になり、生成したε‐カプロラクトンの収率はシクロヘキサンに対して80.0%でした。
また、反応中に照射された光の総エネルギーは2.50×10³ J、光の波長は254 nmであり、吸収率は100%とされています。これらの条件を基に量子収率を計算します。
光子のモル数の計算
まず、光のエネルギーを光子1個あたりのエネルギーに換算します。光の波長λが254 nm(254×10^-9 m)である場合、光子1個のエネルギーEは次の式で求められます。
E = (h × c) / λ
ここで、hはプランク定数(6.626×10^-34 J·s)、cは光速(3.00×10^8 m/s)、λは波長です。
この式を使って光子1個のエネルギーを計算し、その後、実験で与えられた総エネルギー(2.50×10³ J)を使って光子のmol数を求めます。具体的には、光子1個あたりのエネルギーを総エネルギーで割り、モル数に換算します。
生成物のmol数と収率の考慮
次に、ε‐カプロラクトンの生成量を求めます。シクロヘキサンの初期モル数は0.500 molで、収率は80.0%ですので、生成されたε‐カプロラクトンのmol数は以下のように計算できます。
生成物のmol数 = 0.500 mol × 0.800 = 0.400 mol
この値は、反応において生成されたε‐カプロラクトンの実際のモル数です。
量子収率の計算
量子収率は次の式で求められます。
量子収率 = 生成物のmol数 / 吸収された光子のmol数
吸収された光子のmol数を求めるためには、光の総エネルギーと光子1個あたりのエネルギーを使って光子のモル数を計算します。生成物のmol数(0.400 mol)を光子のmol数で割ることで、量子収率を求めます。
まとめ
光化学反応の量子収率は、反応効率を示す重要な指標であり、光エネルギーがどれだけ効率的に生成物に変換されているかを示します。本記事では、シクロヘキサンと酸素を用いた反応における量子収率の計算方法を具体的な実験条件を元に解説しました。量子収率を求めるには、光エネルギー、生成物のmol数、光子のエネルギーを正確に計算し、最終的な結果を導き出す必要があります。
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