過電流継電器の瞬時要素と限時要素の動作特性と保護協調について

工学

過電流継電器(OCR)は、電力設備の過負荷や短絡から機器を保護するために使用される重要な保護装置です。特に瞬時要素と限時要素の特性を理解し、適切に整定することが、保護協調の確保に繋がります。以下では、これらの要素の動作特性と、保護協調に関するポイントについて詳しく解説します。

瞬時要素と限時要素の動作特性

過電流継電器には主に以下の2つの動作要素があります。

  • 瞬時要素:契約最大電力の500〜1,500%の電流を検出し、遅延なしで即座に動作します。主に短絡電流などの大電流に対応します。
  • 限時要素:電流の大きさに応じて、一定時間後に動作します。反限時特性や超反限時特性など、動作時間が電流に反比例する特性を持ちます。

これらの要素は、保護対象となる設備や回路の特性に応じて適切に選定・整定する必要があります。

瞬時要素のロックと限時要素の動作

瞬時要素をロックすることで、試験時などに意図的に動作を抑制することが可能です。しかし、実際の運用時において、瞬時要素が動作しない状態で限時要素が動作するかどうかは、回路のインピーダンスや電流の立ち上がり速度など、さまざまな要因に依存します。特に、短絡電流のような大電流が流れた場合、瞬時要素が動作しない状態でも限時要素が動作する可能性があります。これは、限時要素が設定された整定値と動作時間に基づいて動作するためです。

限時要素の特性曲線と動作時間の関係

限時要素の特性曲線は、電流と動作時間の関係を示すものであり、一般的には以下のような特性を持ちます。

  • 定限時特性:入力電流に関係なく、一定の動作時間を持つ特性です。
  • 反限時特性:入力電流が大きくなるほど、動作時間が短くなる特性です。
  • 超反限時特性:反限時特性よりも、さらに急激に動作時間が短くなる特性です。

これらの特性は、保護協調を考慮して設定されます。例えば、需要家側の過電流継電器が5秒で動作する設定になっている場合、電力会社側の設備はそれよりも長い時間で動作するよう設定します。これにより、事故時にまず需要家の設備が優先的に動作し、広範囲での停電が防がれます。

保護協調の重要性

保護協調とは、異常が発生した際に、最も適切な場所の遮断器のみが動作し、事故箇所以外には影響を与えないようにする調整のことです。過電流継電器の整定時には、上位側と下位側の機器との保護協調を考慮することが重要です。これにより、事故時に最小限の範囲で遮断が行われ、他の回路への影響を最小限に抑えることができます。

まとめ

過電流継電器の瞬時要素と限時要素は、それぞれ異なる特性を持ち、適切な整定と保護協調が求められます。特に、限時要素の特性曲線と動作時間の関係を理解し、保護対象となる設備や回路の特性に応じて適切に設定することが、設備の安全運用に繋がります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました