正則行列に関する問題は、線形代数において非常に重要です。特に、正則行列が満たす4つの命題が同値であることを証明することは、行列の性質を理解するための基本的なステップです。この投稿では、その証明をわかりやすく解説します。
命題の定義と関係性
与えられた4つの命題は、n次正方行列Aに関するもので、これらの命題が同値であることを示すことが求められています。まず、それぞれの命題について簡単に説明します。
- (1) Aは正則である。正則行列とは、行列が逆行列を持つことを意味します。
- (2) 任意のn次列ベクトルbに対して、連立1次方程式Ax = bは唯一の解を持つ。これは、行列Aが連立方程式を解く際に解が一意に定まることを示します。
- (3) rank A = n行列Aのランクがnであることは、Aが満たすべき条件の一つです。
- (4) 適当な基本行列によりAはE_{n}に変形される。基本行列を使って、行列Aを単位行列に変形できることを意味します。
命題(1)から(2)への証明
まず、(1) Aが正則であると仮定します。この場合、Aの逆行列A⁻¹が存在するため、連立方程式Ax = bに対して解は一意に求まります。具体的には、x = A⁻¹bとすることで、任意のbに対して解xが一意に定まります。
よって、(1)が成り立つ場合、(2)も成り立つことが示されました。
命題(2)から(3)への証明
(2)で連立方程式Ax = bが一意に解を持つことがわかりました。この場合、行列Aはランクnを持つことがわかります。なぜなら、Aが正則であるならば、行列Aの列ベクトルが線形独立であるため、そのランクはnに等しいからです。
したがって、(2)が成り立つ場合、(3)も成り立つことが証明されました。
命題(3)から(4)への証明
(3) Aのランクがnであると仮定します。ランクがnであるということは、Aの列ベクトルが線形独立であり、Aは正則行列であることを意味します。正則行列は基本行列を使って単位行列に変形できるため、(4)も成り立つことがわかります。
したがって、(3)が成り立つ場合、(4)も成り立つことが証明されました。
命題(4)から(1)への証明
(4)でAが基本行列によって単位行列に変形できると仮定します。基本行列は逆行列を持つため、Aも逆行列を持つことがわかります。逆行列を持つ行列は正則行列であるため、(1)が成り立ちます。
これにより、(4)が成り立つ場合、(1)も成り立つことが示されました。
まとめ
以上のように、命題(1)、(2)、(3)、(4)が互いに同値であることが示されました。これらの命題は、行列の性質を理解するための重要な概念であり、線形代数における基礎的な知識となります。この証明を通じて、正則行列の理解を深めることができたと思います。
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