ジャン=ジョルジュ・ノヴェールの『舞踊とバレエについての手紙』は、18世紀の舞踊理論における金字塔とされ、バレエ・ダクシオン(筋立てバレエ)の概念を提唱しました。彼の身体表現に対する考え方は、当時の舞踊の枠組みを大きく変革するものでした。
身体表現の新たな定義
ノヴェールは、舞踊を単なる技術的な演技から、感情や物語を伝える「身体による語り」として再定義しました。彼は、舞踊が「情念の表現」であり、ダンサーの身体がそのまま「語り手」となるべきだと主張しました。これにより、舞台上での動きや表情が物語の進行を担う重要な要素となりました。
タブロー(静止画)としての舞台構成
ノヴェールは、舞台上の各場面を「タブロー(静止画)」として構成することを提案しました。各タブローは、登場人物の配置や身振り、表情が自然で表現的であることが求められ、観客が一瞥でその情景を理解できるように設計されるべきだと述べています。これにより、舞台上の一瞬一瞬が絵画のように美しく、かつ物語を語る力を持つことを目指しました。
言葉の排除と身体の優位性
ノヴェールは、舞台上での言葉や口上を排除し、身体の動きこそが最も強力な表現手段であると考えました。彼は、言葉が舞台の「アクシオン(行動)」を冷やし、観客の関心を削ぐ可能性があると指摘し、身体の動きが物語を語る中心であるべきだと強調しました。
ノヴェールの影響と現代舞踊への遺産
ノヴェールの身体表現に対する考え方は、後のバレエや現代舞踊に多大な影響を与えました。彼の「身体による語り」の概念は、舞踊が単なる視覚的な美を追求するのではなく、感情や物語を伝える手段であることを再認識させ、舞踊芸術の表現の幅を広げる契機となりました。
まとめ
ジャン=ジョルジュ・ノヴェールの『舞踊とバレエについての手紙』における身体表現の概念は、舞踊を単なる技術的な演技から、感情や物語を伝える「身体による語り」として再定義し、舞台構成や表現方法に革新をもたらしました。彼の思想は、現代舞踊においても重要な指針となっており、舞踊が持つ表現力の深さと可能性を示しています。
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