「仰す」は元々「命令する」という意味を持っていましたが、平安時代以降に「おっしゃる」という意味に変化しました。この変化について、なぜ「命令なさる」ではなく「おっしゃる」になったのか、また鎌倉時代以降に「仰す」がどのように使われるようになったのかを解説します。
「仰す」の意味の変化
「仰す」という言葉は、最初は「命令する」「指示する」という意味で使用されていました。しかし、平安時代の文学や詩の中で、この言葉が徐々に敬語として使われるようになり、「おっしゃる」という意味を持つようになったとされています。では、なぜ「命令するなさる」ではなく「おっしゃる」という意味に変化したのでしょうか?
1. 平安時代における敬語の発展
平安時代、貴族社会では言葉遣いが非常に重要視され、敬語の体系が発展しました。古語の「仰す」もその一部として、命令を示す言葉から敬意を表す言葉に転用されました。命令の意味が薄れ、尊敬や丁寧さを表すようになったのは、こうした時代背景が影響していると考えられます。
鎌倉時代における「仰す」の変化
鎌倉時代には、さらに「仰す」が敬語として確立し、命令的な意味がほとんど使われなくなったとされています。この時代、社会的地位や役職を問わず、「仰す」は主に尊敬語として使われるようになり、一般的な日常会話でも「おっしゃる」という意味で使われることが多くなりました。
2. 旧来の命令の意味は消えたのか?
鎌倉時代に入ると、「仰す」の命令的な意味はほとんど使われなくなり、現在では主に敬語として認識されています。とはいえ、元々の「命令する」という意味が完全に消失したわけではなく、過去の文学作品や歴史的文献では、依然として命令の意味を持つことがありました。しかし、現代日本語においては、ほとんどの場面で「仰す」は尊敬語として使用されます。
「仰す」が敬語として使われる理由
「仰す」が敬語として使われる理由は、語源的に「高く言う」「上に向かって言う」という意味が含まれており、相手を立てる表現として自然に使われるようになったからです。命令の意味から転じて、相手に対して尊敬や敬意を示すために使われるようになったのです。
3. 現代における「仰す」の使い方
現代では、「仰す」は特にフォーマルな場面や目上の人に対して使われます。「おっしゃる」や「おっしゃっている」などの形で用いられ、日常会話でも敬意を表す言葉として使われています。
まとめ
「仰す」の言葉の変遷は、平安時代から鎌倉時代にかけての日本語の敬語体系の発展に密接に関わっています。元々「命令する」という意味を持っていた「仰す」は、時代とともに「おっしゃる」という尊敬語に変わり、現在ではほとんど命令的な意味は使われなくなりました。言葉の歴史を知ることは、敬語をより深く理解するための手助けになります。
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