なぜ硫化鉄は磁石につかないのか？鉄を含む物質の磁性の違いを解説

学校で「鉄は磁石につく」と習うことが多いですが、硫化鉄（FeS）については鉄を含んでいるにもかかわらず、磁石に反応しないことに疑問を持つ人も多いでしょう。この記事では、鉄とその化合物の磁性について詳しく説明します。

1. 鉄の磁性について

鉄は磁性を持つ金属で、強い磁場に引き寄せられる性質を持っています。この特性は鉄が「フェリ磁性」と呼ばれる物質だからです。フェリ磁性は、原子の磁気モーメント（磁石としての性質）が整列することで発現します。

鉄は特にこの性質が強く、冷たい状態でも磁石としての性質を発揮します。これが「鉄は磁石につく」という現象です。

硫化鉄（FeS）は、鉄と硫黄が化学的に結びついてできる化合物です。この化合物は鉄単体とは異なり、磁性を持ちません。硫化鉄が磁石に引き寄せられない理由は、その分子構造と磁気モーメントの配置にあります。

硫化鉄は、鉄原子の磁気モーメントがランダムに配置されるため、全体として磁場を作り出さないのです。鉄の原子が集まっても、その中で磁場がキャンセルし合うため、磁性が発現しないのです。

鉄は単体でフェリ磁性を示しますが、その化合物（例えば硫化鉄や酸化鉄）は磁性を持たないことがあります。これは、鉄原子が化学的に結びつくことで、その磁性が失われるからです。

また、鉄が化合物の中でどのように結びついているかによって、磁性の有無が決まります。硫化鉄のように硫黄と結びつくと、磁性が失われることが一般的です。

結論として、硫化鉄が磁石に引き寄せられないのは、その分子構造に起因します。鉄が単体で存在する場合は磁性を示しますが、硫化鉄のように他の元素と結びつくと、鉄の磁気モーメントがキャンセルされるため、磁性を持たないのです。

このように、物質の磁性はその化学構造や結合の仕方によって大きく変わるため、鉄が含まれているからといってすべての化合物が磁石に引き寄せられるわけではないのです。