行列の計算において、スカラー倍と行列の積に関する重要な性質を理解することは非常に大切です。この問題では、行列のスカラー倍を使った等式「A(cB) = (cA)B = c(AB)」を証明する方法について解説します。これを理解することで、行列計算を効率よく扱えるようになります。
問題の設定と理解
まず、以下の条件が与えられています。
- l×m 行列 A
- m×n 行列 B
- 定数 c
求めるのは、次の等式が成り立つことの証明です。
A(cB) = (cA)B = c(AB)
この問題では、行列 A と B の積、スカラー c の掛け算、そして行列の結合法則を使って証明を進めます。
証明の準備:行列の定義と性質
行列のスカラー倍とは、行列のすべての要素に定数 c を掛ける操作です。例えば、行列 A が次のように表されるとき。
A = [a11 a12 ... a1m]
スカラー倍 cA は次のようになります。
cA = [c * a11 c * a12 ... c * a1m]
また、行列の積についても、行列同士を掛けるときの順番や方法が決まっています。行列 A の列数と行列 B の行数が一致していないと積は定義されませんが、ここではそれを前提として計算を進めます。
A(cB) の計算
最初に A(cB) を計算してみましょう。ここで、cB は B のすべての要素に c を掛けた行列です。すなわち。
cB = [c * b11 c * b12 ... c * b1n]
したがって、A(cB) は行列 A と行列 cB の積になります。行列の積の定義に従い、A の各行と cB の各列の積を求めます。
この計算を行うことで、A(cB) は行列 A と B の積のスカラー倍、すなわち c(AB) と一致することが確認できます。
(cA)B の計算
次に (cA)B を計算します。ここで、cA は A のすべての要素に c を掛けた行列です。
cA = [c * a11 c * a12 ... c * a1m]
そのため、(cA)B は行列 cA と行列 B の積を計算した結果です。ここでも行列の積の定義に従って計算すると、結果的に (cA)B も c(AB) であることが分かります。
c(AB) の計算
最後に c(AB) を計算します。AB は行列 A と B の積です。そして、AB の結果に対してスカラー c を掛けた行列が c(AB) となります。行列のスカラー倍の定義に従い、各要素に c を掛けることが確認できます。
まとめ:行列のスカラー倍と積の性質
これらの計算を通して、次の等式が成り立つことを証明しました。
A(cB) = (cA)B = c(AB)
行列のスカラー倍と積に関するこの性質は、行列計算を扱う上で非常に重要です。スカラー倍を分配することで計算が簡単になり、複雑な行列の積も扱いやすくなります。
このような証明を理解することで、行列の計算における基本的な性質を身につけ、より複雑な問題にも対応できるようになります。
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