『宇治拾遺物語』の「検非違使忠明のこと」からの引用について、特に日本古典の文法と解釈に関する質問を多くいただきます。ここでは、いくつかの文法的な問題について詳しく解説します。
①「殺さん」の助動詞の意味
「殺さん」の「ん」は、古典における意志を表す助動詞「ん」の一つです。ここでの「殺さん」は「殺すつもりだ」「殺す意志がある」といった意味になります。物語の主語が一人称であるかどうかについては、文脈によるので一概に決定できませんが、この場合「意志」を表しているので、話し手がその行動を起こすつもりであると解釈できます。
②「向かい合いたれ」の助動詞の解釈
「向かい合いたれ」は「向かい合った」という意味です。この「たれ」は完了を表し、過去形でもあります。したがって、「向かい合った」という訳が正しいです。助動詞「たれ」は「完了」の意味を持ちますが、ここでは動作の完了を示すために使われています。
③「鳥のいるようにやをら落ち」の「ように」の比況の意味
「ように」は、ここでは比況の意味で使われています。「鳥のいるようにやをら落ち」の「ように」は、鳥が落ちる様子に例えて、似たような動作や状態を表しています。つまり、何かが鳥のように落ちる、という比喩が込められています。
④「べき」の意味と解釈
「べき」は、訳すと「できそうにもない」というニュアンスではなく、打消しの意味が含まれています。ここで「べき」は義務や必要を表し、「できない」という否定的な意味を強調するために使われています。
⑤「に」+「けり」「けれ」の詠嘆の解釈
「に」+「けり」や「けれ」は、古典文学では詠嘆の意味を持つことがよくあります。「に」は完了の意味、「けり」は過去を表しますが、詠嘆の意味になるのはその出来事に対して感動や驚き、感慨が込められているためです。詠嘆の意味を訳す際には、動作や出来事に感情を込めて訳すことが重要です。
⑥物語全体を通しての人称
『宇治拾遺物語』全体を通しての人称は、第三者視点で書かれていることが多いです。この物語の中でも、登場人物の行動や出来事が描写されているため、主に第三者の視点で物語が進行しています。
まとめ
『宇治拾遺物語』の文法解釈には、古典ならではの表現や助動詞の使い方が多く見られます。特に「ん」や「たれ」などの助動詞は、文脈に応じて意志や完了を表現するために使われています。質問に対しての解答を通じて、古典文学の理解が深まることを願っています。
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