解析学において、実数の部分集合が上に有界であるとき、その上限(supremum)に収束する数列が必ず存在することを示す問題は、実数の順序体としての性質を利用した典型的な問題です。この記事では、この証明方法をわかりやすく解説します。
上に有界な部分集合とsupremumの定義
まず、実数Rの部分集合Aが「上に有界である」とは、Aのすべての要素がある実数M以下であることを意味します。すなわち、Aの上界が存在するということです。この上界をsupA(supremum of A)と呼びます。
supAはAの上界の中で最小の上界であり、Aに含まれる要素がsupAに限りなく近づいていくという性質を持っています。この性質を利用して、supAに収束する数列を構築する方法を探ります。
数列{an}の構築方法
上に有界な部分集合Aに対して、supAに収束する数列{an}を構築する方法を説明します。まず、Aのすべての要素はsupA以下ですから、Aの任意の要素を選び、順番に並べることができます。
次に、数列{an}を次のように定義します。数列の各項anは、Aの中でsupAに近い(但し、supAより小さい)要素を順番に選んでいくことで構成されます。具体的には、anは次の条件を満たします。
– an ∈ A
– an < supA, 且つ an は supA に限りなく近い
これにより、数列{an}がsupAに収束することを保証することができます。
収束の証明
数列{an}がsupAに収束するためには、次の2つの条件を満たす必要があります。
- 数列{an}のすべての項がsupAより小さい。
- 数列{an}がsupAに限りなく近づく。
まず、数列のすべての項anはAの要素であり、supAより小さいため、{an}は上に有界です。
次に、数列{an}はsupAに近づいていきます。これは、anを選ぶ際に「supAより小さい」という条件を満たすため、{an}はsupAに無限に近づいていきます。したがって、lim (n → ∞) an = supA となり、数列{an}はsupAに収束します。
まとめ:上に有界な部分集合からsupAに収束する数列の存在証明
実数Rの部分集合Aが上に有界であれば、必ずsupAに収束する数列{an}が存在します。この証明では、Aの中からsupAに近い要素を順番に選ぶことによって、数列{an}を構成し、その数列がsupAに収束することを示しました。この考え方は実数の順序体としての性質に基づいており、解析学における重要な基本概念の一つです。
コメント