線形代数を学ぶ中で、行列のランクの定義には複数の見方が登場します。中でもよく使われる2つの定義として、「前進消去(行基本変形)によって得られる非ゼロ行の数」と「一次独立な列ベクトルの最大個数」があります。これらは見かけが異なるため別物に感じるかもしれませんが、実はどちらも同じランクを表しています。本記事ではその等価性について、わかりやすい解説と例を通じて丁寧に紹介します。
ランクの2つの定義とは?
まずは、行列のランクに関する2つの定義を確認しましょう。
- 定義①:行基本変形(前進消去)後の非ゼロ行の個数
- 定義②:その行列の列ベクトルのうち一次独立なベクトルの最大個数
一見すると、定義①は「行」に注目し、定義②は「列」に注目しているように思えますが、実は密接に関係しています。
前進消去による行ランクの求め方
前進消去(ガウス消去法)では、行基本変形によって行列を簡約化し、最終的に非ゼロの行の数を数えることでランクを求めます。このとき、非ゼロ行が意味するのは「行ベクトルが線形独立である」ことです。
例えば次の行列Aを考えてみましょう。
A = \begin{bmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 2 & 4 & 6 \\ 1 & 1 & 1 \end{bmatrix}
この行列に前進消去を施すと、2行目が1行目の2倍であり、線形従属であるため消去されます。すると、非ゼロ行は2行のみとなり、ランクは2になります。
列ベクトルの線形独立性との関係
一方、列ベクトルに注目した場合、「互いに線形従属でない(一次独立な)列ベクトルの最大個数」がランクと定義されます。
先ほどの行列Aにおいて、1列目と2列目は線形独立ですが、3列目は1列目と2列目の線形結合として表されるため、最大2本の一次独立な列ベクトルが存在し、こちらもランクは2となります。
なぜ定義が等価になるのか?
行列の基本変形によって、行空間と列空間の次元(=ランク)が変わらないことが知られています。
特に、前進消去では行基本変形によって行が変化しますが、列空間(列ベクトルが張る空間)の次元には影響を与えません。したがって、非ゼロ行の個数=列ベクトルの最大一次独立数となり、両定義は一致するのです。
具体例で理解を深める
次の行列Bを例に考えてみましょう。
B = \begin{bmatrix} 1 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 1 \\ 0 & 0 & 0 \end{bmatrix}
前進消去が完了しており、非ゼロ行は2つ → 行ランクは2です。
列ベクトルに注目すると、3列目は1列目と2列目の和になっており、線形従属です。よって、一次独立な列ベクトルは1列目と2列目の2本 → 列ランクも2となります。
ランクの行列操作における意味と活用
ランクは線形代数において非常に重要な概念であり、例えば以下のような場面で使われます。
- 連立一次方程式の解の存在・一意性の判定
- 写像の核と像の次元の計算
- 行列の階数判定によるベクトル空間の次元理解
ランクを通して、行列がどれほどの情報を持っているかを可視化することができます。
まとめ|ランクの定義は視点が違うだけで本質は同じ
行列のランクに関する「非ゼロ行の数」と「一次独立な列ベクトルの個数」という2つの定義は、見た目は異なっていても本質的には同じ内容を表しています。
どちらの定義も、行列がどれだけの独立な情報を持っているかを測るものであり、それぞれの観点から理解することで、線形代数の深い構造に触れることができます。問題を解く際には、行と列の両方の視点を持ってアプローチしてみましょう。
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