X線回折における面間隔dの求め方は、結晶の格子構造によって異なります。特に、単純立方格子と体心立方格子(BCC)では、同様に見える式が導出されるものの、その過程には明確な違いがあります。本記事では、体心立方格子における面間隔dが単純立方格子と異なる理由を解説し、正しい導出方法を説明します。
単純立方格子における面間隔dの導出
まずは単純立方格子における面間隔dの導出方法を振り返りましょう。単純立方格子では、格子定数aを用いて、面間隔dは以下の式で求められます。
d = a / √(h² + k² + l²)
この式の導出は、逆格子ベクトルbを利用することで行います。単純立方格子では、逆格子ベクトルは次のように表されます。
b₁ = 2π/a eₓ
b₂ = 2π/a eᵧ
b₃ = 2π/a e_z
ここで、hkl面に垂直な逆格子ベクトルbは、b = h b₁ + k b₂ + l b₃
となり、その長さの二乗は次のように計算できます。
|b|² = (2π/a)² (h² + k² + l²)
これを利用して、面間隔dはd = a / √(h² + k² + l²)
となります。
体心立方格子の面間隔dの導出方法
体心立方格子(BCC)でも面間隔dを求める式は似た形になりますが、逆格子の単位格子ベクトルが異なります。体心立方格子の逆格子ベクトルは、以下のように定義されます。
b₁ = 2π/a (eᵧ + e_z)
b₂ = 2π/a (eₓ + e_z)
b₃ = 2π/a (eₓ + eᵧ)
これらのベクトルを使って、hkl面に垂直な逆格子ベクトルbは次のように表されます。
b = h b₁ + k b₂ + l b₃ = 2π/a ((k+l) eₓ + (l+h) eᵧ + (h+k) e_z)
この時、逆格子ベクトルの長さの二乗は。
|b|² = (2π/a)² ((k+l)² + (l+h)² + (h+k)²)
なぜ体心立方格子で面間隔dは異なるのか?
体心立方格子における面間隔dが単純立方格子と同じ形にならない理由は、逆格子ベクトルの定義の違いにあります。単純立方格子では、逆格子ベクトルが直交する座標軸に沿って単純に表されるのに対し、体心立方格子では、逆格子ベクトルが異なる方向を持っているため、その長さの計算が複雑になります。
この違いを理解することで、BCC格子における面間隔dを正しく導出するための基本的な考え方を把握することができます。
体心立方格子における面間隔dの計算方法
体心立方格子における面間隔dの最終的な導出には、次の式が使われます。
d = a / √[(k+l)² + (l+h)² + (h+k)²]
これを単純立方格子の式と比較すると、体心立方格子では逆格子ベクトルの成分が複雑なため、異なる計算結果となります。しかし、基本的な考え方は同様であり、逆格子ベクトルの長さを利用して面間隔を求める方法が適用されています。
まとめ:単純立方格子と体心立方格子の違い
単純立方格子と体心立方格子では、逆格子ベクトルの定義が異なるため、面間隔dの計算方法も異なります。単純立方格子では逆格子ベクトルが直交する座標軸に沿って定義されるため、比較的簡単に計算できますが、体心立方格子では逆格子ベクトルが異なる方向を持つため、計算がやや複雑になります。
いずれにせよ、面間隔dは結晶構造を理解するために重要な物理量であり、逆格子ベクトルの長さを求めることで正しく導出できます。理解を深めるためには、実際の計算を行ってみることが有効です。
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